私のプラおばあちゃんは92歳。
人間の胎盤から生まれたプラセンタで、赤ちゃんを育てる力では誰にも負けないと、いつも誇らしげに話してくれます。
ある日、私はその秘密を聞くことになりました。
孫娘である三姉妹も、静かに息をのんで耳を傾けています。
「昔はね、私、とてもモテて人気があったのよ。お腹の中で赤ちゃんを守る栄養そのものだったんだから」
その言葉は、少し自慢げで、でもどこか優しく温かいものでした。
プラおばあちゃんの力は決して大げさではありません。
胎児を守り、健やかに育てるその働きは、まさに“命を育てる力”そのものだったのです。
けれど、時代は変わります。
ある日、役場の人がやってきて、静かにこう告げました。
「もう、プラおばあちゃんのプラセンタは使えません」
法律や安全性の問題により、長年活躍してきたおばあちゃんは現役を退くことになったのです。
私は寂しさを感じながらも、元気に微笑むおばあちゃんの姿を見て、少し安心しました。
そして同時に思ったのです。
命を育てる力は、ここで終わらせてはいけない。
その想いを引き継ぐように現れたのが、モーモーお父さん。
牛由来のプラセンタです。
「よし、私に任せて!」
力強くそう言って、モーモーお父さんは広い牧場を駆け回り、栄養たっぷりの力を人々に届け始めました。
赤ちゃんやお母さんたちを支える、新しい存在として活躍していきます。
しかし――
1990年代後半、世界中を震撼させる出来事が起こります。
狂牛病の問題です。
安全性への懸念から、モーモーお父さんの役割は突然ストップしてしまいました。
人々は困惑し、命を支える力が再び不足することになります。
そのとき現れたのが、ブーブーお母さん。
豚由来のプラセンタです。
ブーブーお母さんは、とても真面目で優しい存在でした。
モーモーお父さんの代わりに、赤ちゃんたちを支え、命を育てる役割を懸命に担っていきます。
肌や健康を支える力もあり、多くの人に必要とされる存在となりました。
けれど、時が経つにつれて変化が訪れます。
熱に弱くなり、品質の安定が難しくなり、さらに独特の匂いも出てしまうようになったのです。
思うように、良質なプラセンタを届けられない――
その現実に、ブーブーお母さんは静かにこうつぶやきました。
「もう、私一人では無理よ……」
その言葉はとても小さく、それでいて胸に深く響きました。
私はその瞬間、はじめて理解したのです。
命を育てる力は、ひとりで抱えるものではない。
次の世代へ、つないでいくものなのだと。
こうして、人間・牛・豚という三世代のプラセンタは、それぞれの役割を果たしながら、時代の中で静かにバトンを渡していきました。
そして今――
命を守る力は消えることなく、
新しいかたちへと進もうとしているのです。
