ビタミンシー物語

原液物語

ぼくの家は、100年生きたミカンの木

ぼくはビタミンシー

ぼくの家は、
100年生きたミカンの木だった。
父さんも、母さんも、
そのまた父さんも。
みんなこの木の中で生まれたのだ。

ぼくはビタミンシー。昼間は外へ出たことがありません。
どうしてかって?……ぼくは光を浴びると体が溶けてしまうからです。

兄弟たちの大事な役目

でも、ぼくの兄弟たちは、体の中でそれぞれ大事な役目を持っていました。

ビタミンA兄ちゃん

ビタミンA兄ちゃんは、目の中の小さな灯りを守る守護者です。
暗闇でも物が見えるようにロドプシンを支え、皮膚や粘膜を丈夫に保つ任務もこなします。
免疫の前線に顔を出し、体をウイルスやバイ菌から守る頼れる兄ちゃん。
目には見えないけれど、体のあちこちで小さな奇跡を起こしているのです。

ビタミンB兄ちゃん

ビタミンB兄ちゃんは、体のエネルギー工場の司令官です。
食べたものを燃料に変え、体や脳、神経に力を届けます。
さらに肌や髪、血液の健康もそっと見守り、ストレスや疲れがかかると陰で助け舟を出す、頼れる冒険者でもあります。
体の中で小さな旅を続ける彼の働きは、目には見えないけれどとても大きな役割を持っているのです。

両親との別れ

父さんも母さんも、昼間は木の中で隠れて暮らしていました。
でもある嵐の日、二人は風に飛ばされてしまったのです。
それ以来、ぼくは一人で生きることになりました。

少しずつ大人になったぼく

一年かけて、少しずつ大人になったぼく。
でも、ずっと木の幹の中だけで暮らしているのは、やっぱり退屈でした。
ある日のこと、勇気を出して小さな穴から外をのぞいてみました。

まぶしい光。
でも、近くに白くて小さな花のつぼみが見えました。
「ここなら……大丈夫かもしれない」
ぼくはそう思うと、そっと花の中へ入り込みました。

花の中は天国のよう

中は……まるで天国でした。
甘い蜜の香りが漂い、隠れる部屋もあって、
人間が光に当たらないように、袋までかけてくれるのです。

思わずぼくは叫びました。
「やったー!」
こんなに幸せな場所があるなんて。

花の中の小さな戦い

しかし、すべてが幸せだったわけではありません。
時々、蝶やミツバチもやってきます。
だけど、すぐに帰ってくれるので、花の幹に隠れれば大丈夫。

しかし、強敵がいました。
黒アリ軍団です。
「あっ、来たー。」
僕はドキドキです。
その時は必死で、花の房に住み家を作り隠れていました。

花びらに包まれる夢

それから、花びらがゆっくり閉じると、ぼくの体は蜜の香りに包まれ、
季節の風に揺られながら静かに夢の世界へと流れていきました。

見たこともない部屋

そして目を覚ますと、見たこともない大きな部屋のテーブルの上にいました。
上品なカゴの中で、仲間たちと手をつないでいました。

昼を少し過ぎたころ、上品な奥様たちが四人、部屋に入ってきました。
「さあ、どうぞ入って」
髪をきれいにまとめた奥様が笑顔で言いました。
「まあ、美味しそうなミカン。高かったでしょう?」
「そうなのよ。五個で三千円もしたのよ」

そんな会話が聞こえました。
ぼくはドキドキ。「どうなるんだろう?」
すると、ミカンが二つに割られ、白い皮がむかれ——
奥様の口の中へ。

パクリ。
その瞬間、ぼくは思いました。
『ここは……どこ?』


つづく

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